「東京で作られているパソコンがある」
「“MADE IN JAPAN”ではなく、“MADE IN TOKYO”」
そんな話を聞きつけたDigiCon Magazine編集部は、「東京都内でパソコンを作るってどんな?」という疑問を胸に日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下「HP」)の東京・昭島工場を訪問した。
……と、カッコ良く始めたいとこですが、すいません。ワタクシ、IT関連、パソコン関連についてはド素人。単純に、「工場が見たい」という興味だけで昭島まで来てしまいました。
そんなわけで、機械にまつわる難しい話はほとんど書けません。日本で唯一、東京で作られているパソコンの工場ってこんな場所だ、ということが少しでも伝われば幸いにございます。
昭島駅から徒歩約10分。「hp」のロゴが目印。
正面の門をくぐると、HPの昭島事業所長 清水さん、ワークステーション・マーケティング部 大橋さん、ワークステーション営業部 倉又さんが出迎えてくださいました。お忙しい中ありがとうございます。お邪魔いたします。
左から倉又さん、清水さん、大橋さん。
「非常識」を「常識」に
まずは会議室にご案内いただき、ここ昭島事業所の概要の説明を受ける。
- 昭島事業所のほか、原木、大井には倉庫がある(物流拠点が3ヶ所にある、その理由は後ほど!)
- 昭島事業所で生産をしていることにより、短納期・高品質の製品が実現可能
- HPは世界178ヶ国で事業展開しており、昭島工場は日本HPの生産・物流の中心
- 昭島事業所では、受注後5日(!)で商品を納入しており、1日でMax. 5,000台を生産している
「アジアでは他に、中国、インド、シンガポールなどにも工場があります。中国、インドなど新興国では、(比較的安価な)PCをいかに沢山、その広い国土に行き渡せるかが課題なんですね。ただ日本では市場にPCが行き渡っているので、それ以上のものを要求されるんです。ここ昭島事業所では、そうした日本市場の要求に、きめ細かい対応が可能です」と、清水さんは話す。
「日本のお客様の目は厳しいです」と清水さん。
とはいえ、コスト削減のために工場はすべて海外というメーカーも珍しくない状況で、日本、しかも東京で生産するということはそれほど有利なことなのだろうか。
「日本で生産すると、クオリティコントロールの意識が最初から違うんです」と、大橋さんが説明してくれた。「まず、日本での生産は作り方が丁寧です。例えば中国で100台生産して船で運んできたとして、いざ日本で100台ともが問題なく動くかといったら、必ずしもそうとは限らないわけです。それなら最初から日本で、という風に考えることもできますよね。しかも、東京で生産しているということで安心感も持っていただけますし」
そもそも、「日本で生産する」と決めたとき、それに対する社内の意見はどうだったのか。清水さんは真顔で一言、
「“非常識”でした」
と答えた。
「1999年に日本での生産を開始したんですが、この10年、定期的に日本生産をやめるという話が出ていました。それがいつの間にか“常識”になったんですよね。だから、早いとこ次の非常識を探さないと(笑)」
いざ、工場内へ!
お話を伺ったところでいよいよ工場内部へ。
「工場内はノイズの激しい場所もあるので説明が聞こえやすいように」ということで、ヘッドセットを装着しての工場見学だ。このイヤホンを通して、清水さんの説明を聞く。
清水さんの先導に従って非常階段を上り、ドアが開いたと思ったら目に飛び込んできたのは光り輝くグリーンの世界。いや、もっとほかに言いようはあるだろうと我ながら思いますが、このときの心情はそれが一番近かった。薄暗い非常階段から、「あのドアが開いたら工場だ」という心構えなく、突然目の前に現れた「工場」の風景にうろたえる。
だだっ広い空間に屹立するラックの大群。あらゆるところからケーブルが伸びていて、何かたくさんの機械が動く音がしている。そして、なんだか「ホームセンター」のような匂いがする……これはええと、あれだ。「新品」の匂い。なんかうれしい。
「み、緑……!」←心の声。
アッセンブリー(組み立て)ライン
見学ルートに入って最初にあるのは「アッセンブリー(組み立て)ライン」。6mのラインが4本並び、各ライン7~10人ほどのスタッフがパソコンを組み立てている。
キビキビと動くスタッフの皆さん。
パソコンの組み立て作業は以下の手順で開始される。
- シャーシをラインに乗せる
- バーコードで必要な部品をチェック
- チェックした部品の現物を揃える
- 揃えた部品に漏れがないかをバーコードでチェック
- 組み立て作業開始
シャーシはこのように、
積み上げられて出番を待っています。
清水さんが見覚えのあるロゴマークが印刷されたシールを手にしながら「ちょっとこれを見てください」と言う。
おや。ロゴの隠れたシールが?
この工場で作るパソコンは、それぞれ顧客のオーダーによって中身が違う。プロセッサ、メモリ、HDDなど、すべての構成をカスタマイズすると、約3万通りの組み合わせ(!)ができるとか。ということは、もちろん中身を表示するこのシールも、オーダーに合ったものを貼らなければならないわけで……。
「貼り間違え防止のために、いらないものはこうして黒くつぶしておくんです」(清水さん)。
部品管理のバーコードも、このシートに印刷されている。そのときに、必要のないシールは黒く塗りつぶされて出てくるとのこと。おおお、システマチック!
写真で見る組み立て工程
揃えた部品はこうしてシャーシに詰め込まれ、
憧れの「MADE IN TOKYO」シールがシャーシに貼られ、
各部品がネジ留めされて、
フタが閉まったら組み立て完了。
ネジ留め用のドリル。
使わないときはワイヤに吊られて頭上に。
徹底的に効率が優先された生産ライン。ドリルや「MADE IN TOKYO」シールなど、製品以外のものはラインの邪魔にならない位置にワイヤで吊り下げてある。かっこいい~。便利そう~。
1ラインで1分に4台が生産(組み立て)される。スタッフのシフトを組んでいることにより、効率的に生産が可能なこの工場で、このペースでアジア全体の1/4のパソコンが生産されている。
ここまで組み上がったら、つぎはテスト工程!
続きます!!
取材・執筆:斎藤 彩子
写真:滝川 洋平
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